Carthageのコミッター(Collaborator)になりました

先月の2015年6月に、CarthageというCocoaプラットフォーム(iOS/OS X/watchOS)用の依存性管理ツールコミッター(Collaborator)になりました

このプロジェクトは元々ReactiveCocoa 3.0APIを洗練させるためのショーケースとして始まったという側面もあり、ReactiveCocoaのCollaboratorとしては当然注目していました。Carthage v0.6.5からv0.7へのバージョンアップ時に、Swift 1.1から1.2への移行、それに伴うReactiveCocoaのアップデートがあったんですが、そこでRACAPI/設計が大きく変わったことで結構なバグが発生してしまっていました。それらのバグなどを調査・修正して色々とcontributeしている内にinviteしてもらった、という次第です。

RAC 3に慣れていないとなかなか修正し辛いコードベースなのは確かだと思うので、RACのCollaboratorでもあることを活かして貢献していくつもりです。Carthageユーザーで何かお困りの方はこのブログや@ikesyo経由で是非フィードバックをいただければと思っています。

Swiftでジェネリックなメソッドの特殊化を行う方法

今日色々とやり取りをしながら、Swiftでのジェネリックメソッドについてある知見を得たのでまとめておきます。

以下のようなSwiftの型・ジェネリックメソッドがある時、このままでは型指定(特殊化)が面倒になってしまいます。

class Hoge {
    class func genericMethod<T: Request>(callback: T -> Bool) {
        ...
    }
}

// 呼ぶ時
Hoge.genericMethod { (x: SomeRequest) in true }

上記のような場合、型情報のヒントが与えられないのでクロージャでパラメータの型を明示しないといけません。引数にTインスタンス・値を渡す場合は型推論が効くし、以下のように型自体がジェネリックな場合は初期化時に明示的に特殊化が出来るのですが。。

class Generic<T> {}

let generic = Generic<String>()

このようなケースでは、メソッドのパラメータとして型自体を渡させるようにするとそれが型のヒントとなりクロージャで型指定を行う必要がなくなります。

class Hoge {
    class func genericMethod<T: Request>(type: T.Type, callback: T -> Bool) {
        ...
    }
}

// 呼ぶ時
Hoge.genericMethod(SomeRequest.self) { x in true }

振り返ってみればObjective-CではこのようにClassをパラメータで渡すことも多かった気がしますね。

このパターンを使うと、例えばUITableViewCellのdequeueが以下のように出来、キャストが不要になります。

extension UITableView {
    func registerNibForClass<T: UITableViewCell>(type: T.Type) -> UINib {
        let nib = UINib(nibName: type.nibName(), bundle: nil)
        registerNib(nib, forCellReuseIdentifier: type.reuseIdentifier())
        return nib
    }

    func dequeueCell<T: UITableViewCell>(type: T.Type, forIndexPath indexPath: NSIndexPath) -> T {
        return dequeueReusableCellWithIdentifier(type.reuseIdentifier(), forIndexPath: indexPath) as T
    }
}

extension UITableViewCell {
    class func simpleClassName() -> String {
        return NSStringFromClass(self).componentsSeparatedByString(".").last!
    }

    class func nibName() -> String { return simpleClassName() }

    class func reuseIdentifier() -> String { return simpleClassName() }
}

let cell = tableView.dequeueCell(HogeCell.self, forIndexPath: indexPath)

Javaとかでは出来たような気がしますが Hoge.genericMethod<SomeRequest> { x in true } みたいにメソッドコール時に明示的に特殊化が出来ればいいんですけどね。

逆引きReactiveCocoa: 固定値をRACSignalでラップする

非常に基本的なことですが、あまりはっきりと触れられていない(触れる必要がない?)のが、単純に固定値をラップしたシグナルを生成するケースです。方法自体は単純で、以下のようなメソッドが用意されています。

// 値の場合
RACSignal *singleValueSignal = [RACSignal return:@"foobar"];

// 下記と同義
[RACSignal createSignal:^ RACDisposable * (id<RACSubscriber> subscriber) {
    [subscriber sendNext:@"foobar"];
    [subscriber sendCompleted];
    return nil;
}];

// `completed`だけの場合
RACSignal *emptySignal = [RACSignal empty];

// 下記と同義
[RACSignal createSignal:^ RACDisposable * (id<RACSubscriber> subscriber) {
    [subscriber sendCompleted];
    return nil;
}];

// `error`だけの場合
NSError *someError = ...;
RACSignal *errorSignal = [RACSignal error:someError];

// 下記と同義
[RACSignal createSignal:^ RACDisposable * (id<RACSubscriber> subscriber) {
    [subscriber sendError:someError];
    return nil;
}];

利用ケースについて、例えば引数のシグナルの変化に合わせて指定したセレクターを実行する -[NSObject rac_liftSelector:withSignals:] では、引数は全てシグナルでなければならないのですが、

[self.mapView rac_liftSelector:@selector(setCamera:animated:) withSignals:cameraSignal, [RACSignal return:@YES], nil];

というように、固定値を使いたい場合などにはよく使う必要が出てくるのではないでしょうか。

ReactiveCocoaのコミッターになりました(なってました)

もう結構前で昨年末か年始からなのですが、自分でもいくつか解説を書いている ReactiveCocoa というObjective-C用のFunctional Reactive Programmingライブラリのコミッターになりました!

ReactiveCocoa

ちなみに現時点までで19個のプルリクをしていて、マージされたのが15個、クローズされたのが3個、未マージなのが1個という感じです。

以下一覧

結構細かい改善・リファクタリングや機能追加が多いですが、こんな感じの貢献でもスター4,300超えのプロジェクトのコミッターになれるという一例になればと思います。

これからも逆引きReactiveCocoaの記事を書いたり、日本語での情報発信も増やしていければと考えています。日本でRACをお使いの方はどしどしご質問ください!

それでは Let's use ReactiveCocoa!

P.S. 絶賛お仕事も募集中です! (特にReactiveCocoaを使えるiOSなお仕事)

ACAccountStoreのReactiveCocoaラッパーを作った

タイトルのままですが ikesyo/ReactiveAccountStore というAccounts.framework (ACAccountStore) のReactiveCocoaラッパーを作ってみました。

現時点では、以下の4つの非同期メソッドのRACSignalラップ版をサポートしています。

  • -requestAccessToAccountsWithType:options:completion:
  • -saveAccount:withCompletionHandler:
  • -renewCredentialsForAccount:completion:
  • -removeAccount:withCompletionHandler:

より詳しくはヘッダードキュメントを参照してください。

すでにCocoaPodsに登録済みなので、以下で利用できるようになります。

pod 'ReactiveAccountStore'

対応プラットフォームは、OS Xのサポートとdeprecatedのメソッドの関係上、

となっています。

Accounts.frameworkを使用することがあるReactiveCocoaユーザーは利用してみてください(どれだけいるのか)。

VTAcknowledgementsViewControllerのStoryboardサポートを改善した

Pull requestしたらローカライズ依頼された - [yashigani days] などで知ったVTAcknowledgementsViewControllerというライブラリがあります。CocoaPodsが自動生成してくれる各ライブラリのライセンス表記をまとめたファイルをうまいことアプリ内で画面表示してくれる便利ライブラリです。

CocoaPodsが生成するファイル名は通常、Pods-acknowledgements.plistですが、Podfileで下記のようにターゲットを明示的に指定している場合、

# Podfile
target "TargetName" do
  pod 'VTAcknowledgementsViewController'
end

生成されるファイル名がPods-TargetName-acknowledgements.plistというように変わります。

ライブラリの機能としてコードベースでの表示では、以下のようにしてターゲット入りのカスタムPlistファイル名に対応していたのですが、

NSString *path = [[NSBundle mainBundle] pathForResource:@"Pods-TargetName-acknowledgements" ofType:@"plist"];
VTAcknowledgementsViewController *viewController = [[VTAcknowledgementsViewController alloc] initWithAcknowledgementsPlistPath:path];

元のエントリーで追加されていたStoryboardサポートではカスタムPlistファイル名は未対応でした。ということで、Storyboardでの配置でもカスタムPlistファイル名に対応するPull requestをしたらマージされましたよ、というお話です。

Support custom plist name for Storyboard by ikesyo · Pull Request #21 · vtourraine/VTAcknowledgementsViewController · GitHub

設定方法

  1. 元エントリーの画像のように、Storyboard上にUITableViewControllerを配置し、Custom ClassにVTAcknowledgementsViewControllerを指定する。
  2. 配置したTableViewControllerのUser Defined Runtime Attributes
    • Key Path: acknowledgementsPlistName
    • Type: String
    • Value: ファイル名(上記例では "Pods-TargetName-acknowledgements")

    としたものを追加する。

実装内容

設定方法の通り、対応にはUser Defined Runtime Attributesを使用しています。User Defined Runtime Attributesでセットされた値が実際にプロパティにセットされるのは、initWithCoder:awakeFromNibの間のため、Storyboardベースでの初期化のエントリーポイントをinitWithCoder:からawakeFromNibに変更した上で、プロパティに値がセットされているかどうかでデフォルトのファイル名を使用するか、カスタムファイル名を使用するかどうかを切り分けるようにしています。

注意

2014/04/15現在、CocoaPodsでのリリースには上記対応はまだ含まれていません。CHANGELOGを見る限り、次のリリースとなる ver 0.11 で入るのでリリースを待つか、

# Podfile
pod 'VTAcknowledgementsViewController', :head

Podfileの:headオプションでリポジトリからmasterブランチを直接取得してくれば使えるようになります。

それでは便利なCocoaPodsライフを!

2014/05/05 追記

ver 0.11 がリリースされました!ので、以下だけで本対応が含まれたバージョンが使用できます。

# Podfile
pod 'VTAcknowledgementsViewController'

UAObfuscatedString / バイナリ上での文字列難読化ライブラリー

UrbanApps/UAObfuscatedString

NSLog(@"%@", @"".T.h.i.s._.i.s._.a._.t.e.s.t.dot); 
> This is a test.

NSString *identifier = @"".c.o.m.dot.u.r.b.a.n.a.p.p.s.dot.e.x.a.m.p.l.e;

サンプルを見れば分かるように、NSStringのカテゴリーとして英数字や記号のメソッドが追加されており、メソッド呼び出しによって文字連結で文字列を生成していくというライブラリー。

アプリのバックエンドAPIのURLやAPIキーといった知られたくない情報をそのまま文字列定数としてソースコードに記載してしまうと、アプリのバイナリ解析で見つけられたり書き換えができてしまうので、バイナリ上には単一文字としてしか含まれないようにするというアイデア。